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国連の女性差別撤廃委員会が、日本の皇位が男性皇族によって継承されているのは女性差別撤廃条約と相いれないとして、皇室典範改正を勧告した。
日本の女性政策に関する最終見解に盛り込んだ。この勧告に法的拘束力はない。
主権国家における君主の位の継承は国の基本に関わる。国外勢力が決して容喙(ようかい)してはならない事柄だ。「女性差別」と関連付けた勧告は誤りと悪意に満ちた内政干渉であるのに加え、日本国民が敬愛する天皇への誤解や偏見を内外に広める暴挙で断じて容認できない。
林芳正官房長官は会見で「大変遺憾だ。委員会に強く抗議するとともに削除を申し入れた」と語った。林氏は、皇位継承の資格は基本的人権に含まれず、条約第1条の女子への差別に該当しないと政府が説明してきたにもかかわらず、委員会が勧告したことを明らかにした。
抗議と削除要請は当然だが、それだけでは不十分だ。削除に至らなければ、国連への資金拠出の停止・凍結に踏み切ってもらいたい。条約脱退も検討すべきである。
委員会は国連総会が採択した女性差別撤廃条約により設けられ、弁護士や学者、女性団体代表ら23人の委員が締約国の女性政策への勧告を行っている。ローマ教皇には男性が就くが、バチカン市国は締約国でないため勧告対象から外れている。
委員会が日本の皇室を理解していないのは明らかだ。男系男子による継承は皇位の正統性に直結している。この継承原則が非皇族による皇位簒奪(さんだつ)を妨げてきた意義は大きい。また、一般男性は皇族になれないが、一般女性は婚姻により皇族になれる点からも、女性差別との決めつけがいかに不当か分かるはずだ。歴史や伝統が異なる他国と比べるのも論外である。
委員会は2016年にも皇室典範改正を最終見解に盛り込もうとしたが、日本政府の強い抗議で削除した。今回そうできなかった点を政府は猛省し、対策を講じてもらいたい。
最終見解では、夫婦同姓を定めた日本の民法も「差別的な規定」とし、選択的夫婦別姓の導入を勧告した。これも日本の文化や慣習に無理解かつ傲慢な内政干渉というほかなく、女性差別という誤った文脈で語られるのは許されざることだ。
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2024年11月1日付産経新聞【主張】を転載しています